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ここはニコニコ生放送にて活動中の声劇団体【声劇×色々NN】にて 製作・放送されているオリジナル・ストーリー 『Alice+System(アリス・システム)』のウェブサイトなっております。
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この世界は不思議に満ちている。
ある日突然、普通が普通じゃなくなるように、ほんの少し自分の視線を変えるだけで、その入口は容易く世界を変えるだろう。


退屈な世界を、貴方の手で変えてみない?

ねぇ、_____?

 


アリス・システム【序】


 

【prologue01】

蔓が城を覆う瞬間を、俺は未だに忘れる事はできなかった。
空まで伸びるような塔の一番上、導かれるように足を向けたその先で起きた出来事で、俺の世界は180度変わった。

死する事も出来ず、牢獄のように城を覆い尽くす荊に俺の自由は奪われた。

「本日も晴天なり、…ってか。くだらねぇ…」

空はこんな状況なんて興味がないとでも言うように青く、自由を持つ鳥は弧を描き羽ばたく。
城中の人間は自分を残して全てが眠りについた。そうなってから、いくつ年月を跨いだか解らない。それくらい、ずっと孤独だった。

『ならば世界を変えればいいじゃない』

「誰だ…?」

『この世界が嫌なら、君の好きな世界を作る力を持てばいい』

その姿は、言うなれば影。
窓から差し込む光によって室内に出来た影から、ゆるりと人影が具現化していく。
にやり、と口が歪むのを見て、無意識に鳥肌が立つのを感じた。

『こんな世界、壊しちゃいなよ。君が自由になるために、君が主人公になればいい』


 

 

 

【prologue02】

自由とは、何なのでしょう。
城を追われ森深く、唯一生きる自分よりも小さな生き物と共存し、杞憂なく生きる。
…そんなもの、自由なんかじゃなく、退屈なの。

小人サイズに作られた家は小柄な自分でも少しだけ窮屈で、それでも生活するには問題は無かった。
この小さな世界で、毎日毎日何事もなく、朝と夜を繰り返す。
まるで生きているのか死んでいるのかすら解らない程に、それは規則的に繰り返される。

『つまらないのなら、自分が好きなように世界を作ればいいじゃないか』

「…あら、お話では毒りんご売りのおばあさんが来るころだけど、…あなただぁれ?」

『毒りんごなんかより、もっと刺激的な世界を欲しくはない?』

「刺激的な…世界、」

『キミが主人公になれば、この世界はもっと鮮やかに色付くだろうね』


 

 

 

【prologue03】

今日も気づけば、森を走っていた。視界の端には色鮮やかな花が咲く野原。そしてその中に小さく光る、天敵。
小さな唸りが耳に届けば黒い塊が自分目掛けて飛びかかる。
瞬間。
手にした銃を構えればその弾丸は確実に狼の脳天を貫いた。…腐敗した狼の。

「…っ、は、…なんなんだよ…」
狼が動かなくなるのを確認してから、身を隠すように木の根本に落ち着く。走ったせいかばくばくと高鳴る心臓を服の上から握りしめるようにすれば、ふと視界の明度が落ちる。
人の足元がある、そう確認するとゆっくりと視線を上げた。

「誰だ…」

『君は、この世界を終えたい?』

顔ははっきりとは解らない。ただ、口元が笑っている。とても楽しげに。

「…終わるなら、終わらせたい。ばぁさんももう居ないのに、俺はこうして毎日逃げ続けてる。…物語が、終わらないんだ」

『じゃあ、終わらせようよ』

弾むような声が、耳元に響く。

『君が本当の主人公になって、世界を変えたらいい』

言葉は、毒のように浸透した。

 

 

 

【prologue04】

時計の針を、指先で滑らせた。
12時の鐘が耳を裂くように鳴り響く。そして今日も魔法の時間が終わる。
自分を包んでいた絢爛豪華な城や華やかなパーティーはまるで何事もなかったかのように消え去った。ため息だけが、冷たい夜空に溶ける。

「いつも何も残らない…」

今まで触れていた体温すら、毎夜同じ時間に消えていく。開いた掌を握りしめて、また開く。無意味な行動と知りながらも繰り返す行為は、まるで自身の存在を確かめるように何度も、繰り返される。

『寂しいのなら、残せばいい』

「誰が寂しいと言った。僕はただ、脆弱な世界が気にくわないだけだ」

『なら、そんな悲しい眼をするのは止めて、消えない世界を作ればいい』

毎夜、世界が消えた後に囁きかける声。ただ今日はいつもとは違い、その声は姿を持っていた。
伸ばした指先で触れれば、満足そうに手を取られる。

『さあ、魔法の時間は終わり。これからは、君が望む、君だけの世界を作りあげようじゃないか』


 

 

 

 

【prologue06】

両足を水辺に浸す。そしてようやく身体の震えが収まった。
衣服が水を吸い重みを増すのを億劫に思いながらも、今やヒトと同じ形をした自分にその行動は憚られた。
かつては海底で仲間たちと幸せに暮らしていたはずなのに、感情に溺れ、今やこうして一人、報われぬ想いだけを抱いて生きている。

声はあるのに、それが届かない。
存在すらも無かったことになど…自分には出来なかった。
もう一度、水辺に手を伸ばす。冷たさを心地よく感じながら、自分が海の存在ともヒトという存在ともつかない、中途半端な存在になってしまったと…認識させられた。

『ねぇ、君ならこの世界をどうしたい?』

「…どう、と…言われても」

『君なんかまるで最初から居なかった…そんな結末しか与えてくれない世界だ。それなら、好きに生きればいい』

「私は…」

ゆらゆらと視界で揺れる水面が、小さく音を立てた。

「私は……存在していたい。私という存在を、認めてほしい」

『なら、それを邪魔する奴らは………いらないよね?』


 

 

 

 

 

【prologue00】

分厚い扉を閉じる。木陰での読書は私の日常になっていた。
物語にはいつも終わりがくる。私はそれが少し残念だった。

「お話を…終わらせないようにするにはどうしたらいいのかしら」
ゆっくりと瞼を下ろすと、暗闇の中に物語の世界が描かれる。
きらきらと万華鏡のように想像は膨らんだ。
瞼を閉じながら、私はいつも思うのだ。

 

『「君が好きな世界を作ればいいのに」』


 

 

 

 

 

繰り返される日常は、少し視点を変えただけで不思議な世界へと変わる。
ならば、君が好きな世界を作ればいい。君の力で。


 

さあ、君はどんなお話を望む?

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