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ここはニコニコ生放送にて活動中の声劇団体【声劇×色々NN】にて 製作・放送されているオリジナル・ストーリー 『Alice+System(アリス・システム)』のウェブサイトなっております。
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[side:アリス]

最近物語がおかしい。
手の平の本の扉を閉じながら、私は思った。その物語は、小さな頃から何度も読んでいたはずなのに、それらは少しずつ…まるで自己主張でもするかのようにその姿を変えた。

「…本人達に、聞いてみようかなあ…」

私は木の根本にある『入口』を眺めた。不思議の世界へと続く、その扉を。
 

 

 

******************************
[side:赤頭巾]

 

「世界を、終わらせる、か…」

握り締めた銃は冷たく、鈍い光を帯びていた。
寝床にしていた小屋には物音一つなく、ただ静まり返る。どうせならいっそ、このままこの世界が終わればいいんだ。
自分でその体を抱きしめるように蹲れば、どくどくと心臓の音が響く。
そのとき、小屋の扉がゆっくりと開いた。

「…っ!誰、だ…」

振り返った先に居たのは旧知の友人の姿だった。

「……荊、…どうして、ここに。」
「よぉ、相変わらず狼と追いかけっこしてるみてぇだな」
「お前、城は?」
「ああ、半分置いて、出てきた」
「半分…?」
「そう。…どうせお前のところにも現れただろ?あの影」
「影…」

言われて俺は先日のことを思い出す。
黒い影が囁いた、毒のような言葉を。

『君が本当の主人公になって、世界を変えたらいい』

「その顔…やっぱり来たんだな」
「それが、お前がここに居れる理由か?」
「ああ、俺の本体は俺の城にある。どうあってもあの牢獄から出れないみたいでさ」

荊は、前と変わらないようなそぶりで小屋の椅子に適当に座る。

「だからオレの場合は、写し身のこの姿でしか動けねぇってわけ」
「…どうして、ここに来た」
「お前がこのゲームに乗るのか乗らないのかを確かめにきただけだよ」
「俺は…」
「オレはやるぜ?お前が乗らないならお前の分の願いも叶えてやってもいいけど…」
「願い?俺の?」
「ああ、そうだ。あいつらも含めて、…仲が良かったやつらには幸せになって欲しいし」

照れたように笑いかける姿に、相手に見えないように小さく苦笑した。
ああ、【コイツと俺の生きた世界はこうも違うのか】、と。

「なら荊…俺を今すぐ殺せるか?」
「…は?」
「お前にはできないよな、…くっ」

嘲笑するような笑みを浮かべる俺に荊は困惑したように視線を泳がせた。
椅子から立ち上がると手にした銃を迷いなく荊の頭に突きつける。

「お前は優しいから、俺の為に死んでくれるよな?」
「…、っ、お前…!」

そうだ。
俺が主人公にならなければ。
俺が死ぬための世界の主人公に。

 

 

******************************
[side:人魚]
 

水面は、ゆらゆらと輝いていた。
日差しを反射するその動きを見つめ、眩しさに目を細める。
声を聞いたあの日から、私は途方にくれていた。

『それを邪魔するやつらは、いらないよね?』

私は、想い寄せる相手にすらその姿を認められず、かといって自らでその命を消してしまうこともできずに、日々をすごしていた。

『それなら、好きに生きればいい』

「好きに生きろと、言われても・・・」

今までの命ですら、あの人に捧げていたようなもの。
私の行動のすべてが、自分のためではなく、あの人へのただ一つの想い。
そんな私に、一体どうしろというのだ。
何度目になるかわからないため息をつけば、ふと前方に光る渦が現れるのに気づく。
目を凝らせばそれはだんだんと人の姿を形づくり、そしてそれが見知った相手だとわかった。

光から現れたのは、白雪姫だった。
私の姿を見るなり驚いたように瞬きを繰り返すと小さなため息をついてみせる。

「まだこんな所にいらしたの?」
「…白雪」
「この世界は、まもなく終わるわ。私が鮮やかに刺激に満ちた世界をつくってあげる」
「刺激など、いらない。私はただ…」
「存在を、認めてほしいんでしたっけ?」
「ああ」
「それが何になるというの?」
「何…?」
「存在など、周りが動かなければあってもなくても同じ」
「そんなことはない。存在を認めてすら貰えなければ、世界は止まったも同じ」
「いいえ、違うのよ。存在を認められたからといって、世界が動かなければ、その存在など無いに等しいの」
「…そんな、ことは」
「いいの。無理に解ろうとすることはないわ」

そう言うと、白雪姫はふわりと岩を降りる。
鮮やかなドレスを手馴れたように捌くとこちらを振り返り言った。

「あなたと私の望みは違う、それがわかれば十分よ」

にこりと笑みを浮かべ、その場を離れるとゆるい光が彼女の体を包む。
そして、もう一度私に微笑みかけた。

「望み、など…」

彼女の言葉が脳内に反芻する。

『君なんかまるで最初から居なかった…そんな結末しか与えてくれない世界だ。それなら、好きに生きればいい』
『なら、それを邪魔する奴らは………いらないよね?』

『邪魔する奴らは………いらないよね?』

ぐるぐると、黒い蛇が体内を這い回る。
そんな言いようのない気持ち悪さが、この身を包み込んだ。
 

******************************
[side:シンデレラ]
 

12時を回るまでは、僕の世界は終わる事など知らないように見えた。
煌びやかなドレスを纏う娘たちに、その手をとる青年。
華やかな舞踏会の玉座に座りながら僕は、傍らの影へと語りかける。

「それで、君は何をしたいの」
『シンデレラ、君の願いを叶える手伝いがしたいだけだよ』
「手伝い、ね。僕はこのまま時を止められればいいだけだ。僕を求め敬い、僕の望むままのこの世界を」
『立派な望みだと思うよ!…ただねぇ』
「なんだ、何か不都合でも?」
『主人公ってのは、いつでも一人なんだよねぇ』
「だろうね」
『君は願いを叶えるために、物語の一人になってしまった』
「……どういう意味だ?」
『君以外にも、願いを叶えたがっている者は居るということさ。つまり、誰かが主人公になってしまえば、君の願いなんてお構いなしにこの世界は壊れる』
「…そんなもの、僕が主人公になればいい。お前だって、そうさせようと思って僕に吹っ掛けてきたんだろ?」
『ははは!さすがご聡明なシンデレラ殿!ならきっと、君が一番主人公に近いかもしれないねぇ』
「言われなくてもなってやるさ」
『きっと君なら、ご友人と敵対しようが切り捨てる事ができるだろうさ』
「…何を、言っている?僕に友人など…」
『君が終わらない世界を望むように、この世界を終わらせたいと思ってる人物がいるってことさ』
「それと、友人とやらが何の関係が、…っ!」
『君の大事な友人の内、荊姫と赤頭巾だけは、終わらせたがっている』

懐かしい名前を聞いた。
瞬間、脳裏に思い描かれる姿に思わず息を呑む。
そんな様子を影は楽しげに笑った。

「あ、あんなやつら、僕には関係ない!」
『ああ、解っている。だから…』

影はぬるりと背後に回るとそっと僕の体を抱き寄せささやいた。

『君なら二人を、殺せるよねぇ?』
 

******************************

 

物語は、白紙のページを彩る。
ただその先が何色に描かれるかは、まだ誰にも予想などついていなかった。
 

To Be continued
 

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