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ここはニコニコ生放送にて活動中の声劇団体【声劇×色々NN】にて 製作・放送されているオリジナル・ストーリー 『Alice+System(アリス・システム)』のウェブサイトなっております。
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誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
でもそれは、自分の悲鳴かもしれなかった。


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[side:シンデレラ]

「白雪!アリスと会っただろう!?」

声を掛けた先の姿は、いつもとは全く違う者だった。
少しの違和感はすぐに実感に変わる。白雪の表情からは普段の笑みが無くなっていた。

「…白雪、何があった」
「シンデレラ…?嫌ですわ、何も、ありません」

ゆっくりと立ち上がるものの、視線はこちらに向く事はない。
小さく息をする音だけが耳に響けば、僅かな苛立ちから強く相手の肩を引き寄せた。

「何があった!君もアリスを見たんだろう?」
「…ええ、アリスまで、この世界に来てしまったわ。この…壊れるしか未来のない世界に」
「だから、僕が時間を止めてやると言っているんだ」
「止めてどうなりますの?繰り返す恐ろしさを貴方はわかっていないから言えるのよ!」
「わからないな。君だって無くなる恐ろしさを知らないだろう。
手の中にある温もりが消える恐ろしさを知らないじゃないか!」
「ええ、解らないわ。でもそれが何だって言うの?結局…結局私達にはそれしか残っていないじゃない!」

目の前に居るのは、僕の知っている気丈な白雪ではなかった。
小さく肩を震わせ崩れ落ちる姿に手を伸ばしかけた所で、その姿の先の人物と目が合う。

「…人魚、」
「こんな所にいたのかい、シンデレラ」
「人魚、あなたどうして…」
「おや白雪、君が言ったんだろう?動かなければ世界は変わらない、と」

人魚が緩やかに微笑む。だがその奇妙な感覚に陥ったのは僕だけではなかったようだ。
先ほどまで弱々しく崩れていた白雪が、真っ直ぐに人魚を見つめていた。

「…あなた、本当にあの人魚…?」
「おや、幼馴染だというのに失礼な話だ。私は何か変わったかい?」
「変わった事もわからないほど、おかしくなったのか?」
「シンデレラまで…。二人とも酷いことを…」

言葉とは裏腹に笑う姿に、言い表せぬ不快感が背筋を這い上がる。

「私が変わったんじゃない。世界が私を認めて変わったんだよ」

口角の上がる表情、その瞳は鈍く沈んでいた。
それはまるで、深海のように。

「…っ、シンデレラ。私、人魚と話したいことがありますの。あなたは、…アリスを追って」
「白雪…」
「貴方が言いかけた事、わかっているつもりですわ。…だからこそ、私は言いましたのよ」

僕と人魚を遮るように白雪が立てば、ようやく視線が合う。
その瞳は、先ほどまでの絶望に満ちた瞳ではなかった。


「この世界は、壊れるしか未来はありませんのよ」

 

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[side:茨]


影の気配を追うように、オレは走っていた。
気配を追うなんて大層な事言ったって、実際につかめているのはおぼろげな雰囲気のみだったが。

「ちっくしょ…、アイツ、どこにいんだよ…」
「荊の、お兄ちゃん?」
「…あり、す?」

聞き覚えのある声に振り向けば、そこには可愛がっていた別の世界の少女が佇んでいた。
オレの姿を見るなり飛び込んでくる少女を抱きしめ、その体温に久々に心が安らいだ気がした。

「アリス…アリスなのか?どうしてここに!」
「えと、お話を読んでたら、お兄ちゃん達が大変なことになってたから…。ねぇ、皆どうしちゃったの?」
「あ…、と。その、」

無垢な瞳で見上げるアリスに合わせて少し屈めば心配そうに縋る姿に胸が締め付けられる。どう説明したら良いか迷っていれば、心配そうな瞳に心が痛んだ。

「ねぇ、みんな変だよ。白雪のお姉ちゃんは『荊のお兄ちゃんによろしく』って言うし
シンデレラのお兄ちゃんには怒られるし…。
会えてないけど、赤頭巾のお兄ちゃんと人魚のお兄ちゃんは大丈夫?前みたいに、笑ってくれる?」

アリスの言葉に、先ほどまで会ってきた二人の姿を思い出す。
思わず視線をそらし、俯けば泣き出しそうな声が耳に響く。

「アリス…皆が笑ってないとやだ…」
「アリ…、っ、!?」

顔を上げた先に、オレの思考は止まった。
目の前に居たはずの少女は、真っ黒な影に覆われ半月の様に笑っていたからだ。

「なん…、お前、は」
『おやぁ?どうしたんだい、荊の君。大好きなアリスと会えて嬉しいだろう?』
「なんで、アリス…アリスはどうした!」
『さぁてねぇ…。ところで君、随分と逃げ回ってるみたいじゃないか。…所詮君の力なんてそんなもんなんだねぇ。がっかりだよ』
「ち、違う!今は」
『今は、なんだい?君は逃げるのが本当に得意だよねえ。あの時だってそうさ。大事だの大切だの、色々言う割には守れなかったよねぇ…金の髪の、お姫様』
「なんで…それを…」

じわりと、左目の奥が疼いた気がした。
定まらない視点で正面を見れば、アリスが俯き小さく肩を震わせた。


…笑っているのだろうか。


「…アリス、」
『ねぇ、荊のお兄ちゃん。お兄ちゃんに世界を変える力なんて無いって早く気付きなよ。
君なんかが物語のヒーローにでもなったつもりかい?
驕るのも大概にしなよぉ…君に誰かを救う力なんてない。その結果が、君の左目じゃないか!』

アリスの小さな手が、オレの眼帯を引きちぎる。
疼いた左目からは、出るはずも無い涙が熱を持って零れ落ちるような感覚。

「う、あ…っ!」
「お兄ちゃん?お兄ちゃんどうしたの?」
「やめろ…アリス、お前まで、オレを…っ!」
「お兄ちゃんしっかりして!アリスには何も聞こえない!ねぇ、誰とお話してるの!?」
「は、離せ!オレは、無力なんかじゃ、…っ!」
「きゃっ!」

力任せに振りほどけば、小さな悲鳴と共に人が倒れる音がする。慌てて視線を戻せば、地面に倒れこむアリスの姿があった。

「あ、アリス…!」
『そうやって君は、また大切な物から逃げるんだねぇ』
「違う!オレは逃げたりしねぇ!」
『じゃあ君の力って何なの?友達を救うって?』
「オレは、…っ」

ぐるりと、黒い影に包まれ、呼吸ができなくなる。
視界を覆われた一瞬の先に居たのは、
赤頭巾だった。

『ほら!救えるなら救ってごらんよ。君のちっぽけな力でさあ!彼の願いは知ってるよねぇ?…君の力で、救えばいい。君の手を彼の血で染めよう』
「…そん、なの…」


「できない、なんて言うなよ」


声に反応するように上げた視線。目が合ったアイツは、待っていたかのように、笑った。

 

「よぉ、荊…。ようやく俺を殺しにきたか?…親友」

 

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物語のコマは、全て出揃った。
あとはただ、その行方を追えばいい。

To Be continued

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