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ここはニコニコ生放送にて活動中の声劇団体【声劇×色々NN】にて 製作・放送されているオリジナル・ストーリー 『Alice+System(アリス・システム)』のウェブサイトなっております。
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ひび割れたチェス盤に乱雑に置かれた駒のように。
歪に壊れた世界は、ちぐはぐな結末へと向かい始める。


***************************************

[side:シンデレラ]

「アリス!」

荊の所へ向かったアリスを追いかけて来てみれば、彼女はただ地面に座り込んでいた。
名前を呼び駆け寄ると小さな体を震わせ、戸惑うようにこちらを見上げる。

「…アリス、」
「っ、シンデレラの、おにいちゃん…」

視界を巡らせれば、対峙する二人を見つける。
こんな光景を見るのは、もう何度目になるかわからない。
それぐらい、彼らの衝突は日常的で、かつ、自然なものだった。


だった、はずだった。


今の状況で見るこの光景は、僕には恐怖しか与えない。
光を灯さない瞳で見据える赤頭巾と、怯えた瞳で焦点を合わせられない荊。
あまりにも、不自然で、あまりにも残酷な組み合わせに見えた。

「…あの、っバカ共…!僕が止めてやった恩を忘れたのか!」

二人を止めようと立ち上がった瞬間、僕の体は黒い影に覆われた。
一瞬の出来事に思わず目を閉じる。ゆっくりと目を開ければそれはまるで鳥かごのような形で僕を覆っていた。

「これは…っ」
『お気に召さなかったかい?シンデレラ』
「お前…、何のつもりだ」

頭上から降る聞きなれた声の相手に気づけば、視線も送らずに声を掛ける。

『見て解らないかい?君をとっておきの場所に招待しようと思ってね』
「二人が殺しあうのを見ていろと?とんだ悪趣味だな!」
『二人…、ふふふ、あはははは!』
「何がおかしい!」
『二人だけ…?君の大事なお友達は、彼らだけだったっけぇ?』
「…、人魚、と、白雪―――いや、まさか。二人は、」
『狂った彼を止める為に、幼馴染の彼女は何をすると思うー?』

楽しげに声を弾ませながら影は手元に持つ本のページを捲る。
前方には赤頭巾と荊の姿が見える。そして僕の後方には、先ほど会って来た二人の姿があった。
世界が、この鳥かごを境に分離する。

『ほうら…ゲームは始まった。シンデレラ、君には誰の悲鳴が一番最初に聞こえるかな?』

 

***************************************

[side:白雪姫]

「ねぇ人魚。貴方の望みは変わってしまいましたの?」
「何をいいだすかと思えば…、何も変わってはいないよ。私はただ、認められたいだけ」

穏やかな笑みは、昔を思い出させたけれどやはり何かが違うように見えた。

「それなら、貴方のやり方は間違ってますわ」
「君のやり方だって、間違っているじゃないか。…現に何も変わっていないだろう?君の力では」

射抜くような視線と共に吐き出される言葉に心臓を抉られるようだった。
影に言われたことは間違ってなどいない。
自分は平穏や変わらない日々に飽いていたはずなのに、何も起こそうとはしなかった。
このゲームが始まってからもそれは変わらない。

自分の為に誰かを犠牲にするなど、到底できそうになかったからだ。

「私はね…もう疲れてしまったんだ。誰かを一途に愛する事も、ただひたすらに想い続けることも…」

一番に目の前の幼馴染に会いに行ったのは、彼ならば『変わらないまま』でいると思っていたかったからかもしれない。

「それで、わかったんだよ。私が想うのではない、周りの全てを服従させ私を想わせればいいのだと。…私の力で、私を認めさせればいいと」

皆の中で穏やかに笑む彼のまま、変わらないと信じたかった。

「…さぁ白雪。君も私を認めてくれるかい?私の世界で、私のための箱庭で、また共に」
「お断りしますわ」
「…へぇ」
「だって貴方、私の知っている人魚じゃありませんもの」
「…ふふ、まだそんな事を」
「私が認めている人魚は、今の貴方のように狂った頭なんてしてないわ」
「おや、私が狂っているんじゃなく、君が狂っているのかもしれないよ?」
「そうかもしれませんわね、確かに狂ってましたわ。こんなゲームに乗りさえしなければ…」

真っ直ぐに人魚を見つめる。
交わした視線の先の瞳に息を飲めば、決心は固まった。


「こんなゲームに乗らなければ、大切な世界が壊れる事はなかったのよ」
「私が新しい世界をあげるよ」
「強制された感情に崇拝されて、貴方満足ですの?」

少しだけ、彼の瞳が揺らいだ気がした。

「この世界は、貴方が最も嫌悪する形で終わるわ。…私もそうしてあげる」


***************************************

[side:赤頭巾]

怯えたような顔をする荊に、何故だか笑いが込み上げてきた。
ようやく世界を終わらせられるのだと思うと、高揚する気持ちは抑えられなかった。

「いつもの威勢はどうした?まるで小動物だな」
「赤頭巾…、オレは、お前と戦いたくない」
「おいおい…さっきも言っただろ?」

手にした銃を構えれば、荊に向ける。迷いも無く引き金を引けば、その弾丸は相手に右腕を掠める。荊の腕に真っ赤な雫があふれた。

「…っく!う、…っ」
「できない、なんて言うなよ。お前以外に俺を殺せるやつはいないだろ?」
「殺さなくても、きっと…!」
「だめだよ。…それとも、また、逃げる?」
「っ!!」

銃を構えたままからかう様に笑ってやれば、案の上相手は悔しそうに息を飲んだ。
一歩一歩近づき距離を縮める。
怯えだけだった瞳の色が、ゆっくりと別の物に変わる。

「お前の強さは驕りだ。救えもしない相手に期待を持たせて、陥れる」
「違う!そんなんじゃねぇ!」
「俺にも言ったよな?俺の分の願いも叶えるって」

距離が縮まれば、銃口はいとも簡単に相手の額へ触れた。

「じゃあ叶えろよ!今すぐ!今すぐ俺を殺せ!」
「…っ、ふざけんな…!」
「やっぱり出来ないじゃないか!お前に救える世界なんてない…お前は主人公になんてなれない!一生あの塔に―――…」

 

言いかけた所で自分の腕が拘束されている事に気づく。
光の粒子の荊が俺の銃を締め上げるとまるで玩具のようにそれは壊れた。


「ふざけてんじゃねぇよ…そんなに言うんだったら叶えてやるよ!」
「ようやくやる気になったか…」

手の中に粒子を集めて剣を作り出す荊に合わせて、俺ももう一つの銃を取り出す。それを手にすれば空を薙ぐ様に一振りした。手の中の銃は一瞬にして剣に変わる。

「お前とちゃんとやり合うなんてガキの頃以来だよなぁ…」

手になじまない剣を見ながら声を掛けても返事は無かった。
感覚を確かめる剣の先端越しに見る荊は、唇をかみ締め、泣いているようにも見える。

「これが最後なんだ。一突きなんてつまんねぇ事言わないから、本気でかかってこいよ。俺も本気で殺しにいくから」

荊はゆっくりと視線を上げる。
もうその瞳に迷いは無かった。決心するように俺を見据えると、慣れた手つきで剣を構える。
それを見てようやく俺は安心した。きっとこれで荊は気付かないままだ。

 

「…最後の願いだ。気付くなよ……親友」

 

相手に聞こえない様に口元だけで呟けば、俺も覚悟を決めた。
さぁ、終わりにしよう。この狂った世界を。


To Be continued

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